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【2023年回メイン】百合文芸小説コンテストの過去結果から、傾向と対策について考えてみた

百合文芸考察アイキャッチ 各種賞の考察
この記事はこんな人に特におすすめ

・pixivの百合文芸コンテストで賞を狙っていきたいので傾向と対策を知りたい

・百合文芸ってどういう賞なの?

百合文芸小説コンテスト(以下、百合文芸)は、2018年より開催されているコンテストです。

百合(=ガールズラブ)のみにフォーカスした文芸公募は珍しいので、毎回の700作を超える応募がある百合愛好家に人気のあるコンテストです。大体年1回のペースで行われているようです。

毎回、王道から、だいぶどうかしている作品まで、様々な小説が百合嗜好の殴り合いを繰り広げるこの場で、賞を取りたいと思う人も少なくないと思います。

今回は、主に第5回の応募作をもとに、近年の応募作品傾向と、次回への受賞の対策について考えてみました

著者は、百合文芸のことを知ったのが5回からなので、あんまり役に立たないかもしれないので、気休め程度にお読みください。


・なお2024年回はこちら↓

◇このブログの運営者・サメダ(下読み経験者)の、「あなたの小説に感想を書きます」サービス・ランサーズにて承り中

第5回の受賞枠について

はじめに、どんな賞が設置されているのか見ていきたいと思います。

大賞:両部門合わせて1名

コミック百合姫賞:両部門合わせて1名

新潮文庫nex賞:両部門合わせて1名

EARLY WING賞:短編部門より1名

書泉百合部賞:短編部門より1名

pixiv賞:両部門より複数名

全受賞者副賞

短編部門:2023年にピクシブより発行予定の冊子へ収録

長編部門:pixivノベルへ掲載

pixiv

ちなみに、応募は2部門あって、

短編部門(5,000字以上~19,999字以下)

中・長編部門(20,000字以上)

pixiv

で、投稿時に自動振り分けされると、公式ページには書いてあります。

ところで、賞を出している団体や企業は、毎回変動があります。

今回は、第2~4回まで協賛していた、『SFマガジン』が抜けたので、SF枠が実質なくなった感じです。新設の賞は、新潮文庫nex賞、EARLY WING賞ですね。

新潮文庫nexは、青春、民俗学、時代風、ミステリ、本格寄りファンタジーを多く出している印象のライト文芸系なので、そういうのが欲しいのかな? と思ってみたりしますね。

また、新潮社自体が、あの、怪作を世に出しまくってきた『日本ファンタジーノベル大賞』を擁する出版社なので、懐は広そう。

新潮文庫nex・個人的におすすめ作品

青の数学

やや出版年が古いのですが、数学をテーマにしている青春もので、個人的におすすめ。この作家のデビュー作は『天盆』ですが、そちらよりこの作品のほうが読みやすい印象。


天久鷹央シリーズ

医療ミステリ。知念さんは、福ミスでデビューされた方で、現役医師です。この天久鷹央シリーズはコミカライズもされています。このシリーズは14作目から実業之日本社刊行に移転。


階段島シリーズ

青春もの。2019年に映画化もされています。

2023/10/16追記

新潮文庫nex賞は、南北戦争時代の歴史を絡めた作品(長編部門)でした。新潮文庫nexが好きそうな作品で、新潮文庫nexブレないな、という感じでほっこりしました。

10/19追記:この作品の初出は、『殺伐百合アンソロジー』(零合舎)だそうです。中の方、ご指摘ありがとうございます。

殺伐百合アンソロジー: Edge of Lilies (殺伐連邦)

なお、第5回は、歴史ものはこの賞以外では受賞していません。

書泉百合部は1~5回までずっと協賛しているのですが、賞としてどういうのが好き、というのは、これと言って特徴をつかみにくい感じです。

コミック百合姫賞は、短編と長編のどちらからも受賞作が出たことがあります。第1、2回は短編、第3、4回は長編に賞を上げています。

『百合姫』自体は、現代百合の連載物がメインなので、ファンタジーより、現代ものが有利なのかも? とも思いましたけど、第4回の受賞作品はファンタジーなんですよね。でも現代ものがやや有利?

2023/10/16追記

コミック百合姫賞は第5回は近未来SFでした。長編部門より選出です。考えてみるとコミカライズして一冊の本の体裁にするには、短編ではボリュームが足りないのかなとも思ったりします。

受賞には短編が有利なのか

今回の受賞枠を見ていくと、短編の受賞枠数のほうが長編より多い気がしてきませんか? 

著者も始めそう思ったんですよ。短編が受賞に有利かも、と。

でも、どうもそうじゃない様子。

前回の第4回の時は、短編と長編って、著者の見たところ、受賞数が同数だったんですよね。

第4回pixiv賞は受賞数が16だったんですが、短編が6、長編が10でした。この、複数採用のpixiv賞で、短編と長編の全体の受賞数がフェアになるように調整してるみたいです。

とすると、今回もそうやって調整してくる可能性がある。

だから、短編と長編どちらかが圧倒的に有利、ということはないのではないかと思います。

2023/10/16追記

第5回の最終結果出ました。受賞枠は15。

大賞は短編です。

上位4賞(pixiv賞以外)は、短編2、長編2でフェアな感じです。

ただし、受賞作の全体の内訳は、短編9、長編6。

第5回は短編が多めに採用されるという結果になりました。(応募数全体に占める短編の割合が高かったのかもしれないですが、そこまで調べきれてません。数えた人いたら教えてくださると助かります)




ルールが結構煩雑で、規定で振り落とされるリスク高し

この百合文芸、応募要項を見た人は気づくと思いますが、けっこうルールが煩雑で、トラップ感があります

・参加タグ(「百合文芸5」)が設定されていない作品

・pixivでの公開範囲が「マイピク限定」「非公開」に設定されている作品

・pixivでの閲覧制限が「R-18」「R-18G」に設定されている作品

・開催期間を過ぎて投稿、編集された作品(誤字やキャプションなど軽微な編集を含む)

・企業または複数の方による共作

・保護者の同意を得ずに参加した未成年ユーザーによる投稿作品

・残虐表現、またはわいせつ表現。

pixiv

これ全部禁止で、守らないと選考外になると明記されている。

このくらいならみんな守ると思うんですけど、ほかにも、

・「オリジナル作品」にチェックを入れる

・あらすじ200-400字以内(→第4回募集より変更)

・中・長編部門の場合、あらすじは結末まで書くことが必須

・シリーズものは一作目のみ参加タグ

pixiv

などがあります。この4点は、応募要項とはいっても、「守らなかったら選考外になる」とは書いていないので、ここは必ずしも順守しなくてもいいのかもしれないですけど、ルールが煩雑な印象ですね。






ブクマ数や閲覧数は選考に関係するのか

pixivにおいて、ブクマ数や閲覧数は、すごく重要だと思っている人も多いと思います。

小説投稿は、イラスト投稿より、圧倒的にブクマも閲覧も伸びないですが、でも、その中でも、多い少ないで一喜一憂したりしますよね。

すごく評価されている作品と、いまいちブクマの伸びない自分の作品を見比べた時、「ブクマ数・閲覧数が選考にかかわってきたらどうしよう」って思いませんか? 実際、他サイトでは、他読者からの評価を、選考に加味する賞もあります。

百合文芸では選考者がこう明言しています。

Twitterのフォロワー数、pixivでの閲覧数やブクマ数なども選考に関わりありません

pixivon 百合文芸4選考会レポートの記事より

でもそうは言ったって、人から評価されてる回数が多い作品を取るんじゃないの? と思うかもしれないので、著者は調べてみました。

受賞作の中に、いいねが2で、ブクマが3の作品がありました。安心してください。ブクマ数・閲覧数が伸びなくても、なんとかなるようです。




百合文芸コンテスト5応募作から見た、百合小説のあるある要素

応募作をすべて読むことはできなかったので、タイトルとキャプション文をメインに調べていったのですが、下記の要素が入っている作品が多かった印象です。

  • 病気(ファンタジー奇病含む)
  • 「クソ」という表現を使いがち
  • 魔法少女・魔女
  • 吸血鬼
  • アイドル
  • いじめ
  • 星、花
  • すれ違いからの和解

すれ違いからの和解はキャプションを見る限りけっこうありました。また、「星」は、タイトルに入っていることが多かったです。

また、作品傾向としては、

  • 現代もの
  • SFもの
  • 本格風歴史もの

が目立ちました。

ファンタジーより現代ものが多かった気がします。現代ものは、大きく、学生ものと社会人ものに分かれますが、学生ものだと、高校生くらいの年齢設定が多め。

SFものは、百合×とんでもない設定・展開の作品が多め。SFが多いのは、第2~4回まで協賛していた、『SFマガジン』の影響の名残もあるのかもしれません。

本格風歴史ものがわりとあったのは、第4回の大賞が歴史関係のテーマだったから、というのが大きい気がします。ソ連百合が一世を風靡してるから、そういうノリもあるのかもですね。

しかし第5回の一次では、歴史勢はけっこう振り落とされています。

pixivon百合文芸4選考会レポートの記事によれば、他に応募作に多い要素としては、「死体埋め」と「片方が死ぬ」ものだそうです。

これらのみんなが使いがちな要素を使うこと自体がダメなんじゃなくて、差別化をどうするか、というのが重要っていうことが、レポートには書かれてた印象です。




一次選考には何作残るの? どのくらいの確率なの?

一次選考の結果はだいたい、〆切から2か月後くらいに出るみたいです。

ただし、第5回は、出るのが遅く、出ないんじゃないかとも噂され、6月に入ってからやっと出ました。その間、界隈はやきもきしていました。

一次に上がれる作品の数はこんな感じです。表記は、「一次通過作品数/全体応募数(選考に残れる確率)」です。

  • 第1回:24作/735作(約3.2%)
  • 第2回:50作/781作(約6.4%)
  • 第3回:64作/843作(約7.5%)
  • 第4回:44作/707作(約6.2%)
  • 第5回:50作/798作(約6.2%)

応募数は、それぞれの回の百合文芸タグで、「シリーズ単位で表示」で検索した時に出てきた投稿作品数です。実際は、もう投稿を消しちゃってる作品もあると思うので、もっと応募作品数は多かったと思います。

これを見ると、毎回、一次の通過率は、第1回を除くと6%超くらいで推移してることがわかります。

一次でけっこう絞りますよね

著者が第5回応募作で、この作品は受賞確定じゃないだろうか、と思った作品は一次でことごとく落ちていました。作品のレベルが高ければ必ず選考に通るというものでもないようです。やはりレーベルのカラーが大切なんでしょうか。

受賞発表されたら、傾向をさらに見ていきたいと思います。

でも、考え方を変えてみると、一次通過=実質最終選考に残った数がこれなんですよね。

あとはこの絞られた中から、受賞が決まる。賞に入れる作品数は、一次選考通過作の約半数という印象です。一次まで来れたら、ほぼゴールという印象なのかも。

2023/10/16追記

第5回は、一次通過50→受賞作15まで絞られたので、一次通過=ほぼゴールではなくなりました。

受賞者は、すでに出版歴のあるプロ(セミプロ)、百合文芸のほかの回で受賞歴のあるユーザーなどからの選出がわりと目立ちました。ここで勝ちあがるのは、なかなかハードな模様。

また、この賞の特徴として、受賞しても驚くほど読まれない場合が多いです。上位の賞を受賞すればちょっと読まれるのかな、くらいの感じです。応募数は多いものの、他人の書いた百合にあまり興味のないユーザーが多いようで、応募作品群を見ていても、いいね数0ブクマ0が並んでいたりするけっこうシビアな環境です。



受賞したくばコンプラを守れ?

これは、pixivonの百合文芸4選考会レポートの記事からの引用です。

数年前なら許されていたある種の無邪気さが今では問題になる……ということは、百合に限らずフィクションにおいて往々にしてあります。現代的な価値観に向き合うことは、必ずしも作品の幅を狭めるものではありません。

pixivonの百合文芸4選考会レポートの記事

これは、コンプラ縛りの世の中なので、突拍子もない作品でもいいけど、コンプラは守れ、と暗に言いたいのではないでしょうか。

他にも、pixivonの百合文芸選考会のレポート記事は、応募に当たっての示唆に富んだアドバイスが載っているので、応募者必見かと思います。

「自分が考えた最強の百合」を発表する場。「第4回百合文芸小説コンテスト」は選考会まで熱かった!
女性同士の恋愛や友愛を描いた小説を選出する「第4回百合文芸小説コンテスト」の選考会が行われました。『コミック百合姫』、『SFマガジン』、河出書房新社、書泉百合部のスタッフが選考員を務め、熱い「百合論」を交わしました。大賞をはじめとした受賞作...



受賞作研究を推奨

どんな賞でもそうですが、受賞作を読んでみると、その賞において、賞を取る作品の傾向が、よりつかみやすくなります。書籍化しているものをピックアップしてみました。

小説

『百合小説コレクション wiz』 (河出文庫)

第4回受賞作の「あの日、私たちはバスに乗った」と、「嘘つき姫」が収録されています。

あの日、私たち~は、キャラクターの奇行がコミカルな青春百合。

嘘つき姫は歴史ベース。

また、受賞自体はしていない?のですが(pixivピックアップというカテゴリで掲載)、第1回百合文芸で登場時、このコンテストで話題をさらったソ連百合、

南木義隆の『月と怪物』が収録されているのが、

  • 『アステリズムに花束を』(ハヤカワ文庫JA)です。

著作で同じくソ連百合の『蝶と帝国』がありますが、『月と怪物』を先に読んだほうが、ソ連百合の世界観が理解しやすいです。

正直、『蝶と帝国』から読むと主人公の力が何なのか、よくわからない部分があります。

『百合小説コレクション wiz』 は、『アステリズムに花束を』よりも個人的には読みやすいかなと思います。

というのも『アステリズムに花束を』は、百合SFをメインで収録しているので、やや難解な話が見受けられます。上級者向け。

ただ、『アステリズムに花束を』収録の『月と怪物』は、作品の濃さが群を抜いており、一読の価値アリです。

『月と怪物』が百合文芸コンテストの過激描写許容ラインだと考えるのはちょっと違う印象なので、あくまでこういう怪作も出た、というくらいに考えたほうがよいかと思います。



マンガ

第3回の百合姫賞を獲得した作品のコミカライズ

『夏とレモンとオーバーレイ』(百合姫コミックス) 

ほかにも、受賞作家は様々なところで活躍しているので、探してみるといいかもしれません。

まとめ

・百合文芸の応募要項は非常にややこしいのでここで振り落とされないようによく読み込もう

・百合文芸の一次選考は熾烈。

・コンプラ順守で


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このブログを書いている人
サメダ

小説を読むのが好きで、一般文芸系小説賞の下読みを数年しています。
公募勢でもあり、これまでの獲得賞金は160万超。
このブログでは創作、公募について発信していきます。記事内容は、公式とは無関係で、著者の主観による部分が大きいことをお断りしておきます。
文章書き、小説感想書きのお仕事承ります。問い合わせフォームからメッセを投げてみてください。

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