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百合文芸誌『零合』がどんな原稿を求めているのか傾向を考えてみた+創刊号感想

百合文芸誌傾向考えてみたアイキャッチ 各種賞の考察

零合舎が、2023年2月に創刊した百合文芸誌『零合』(ぜろごう)。

百合漫画専門雑誌は既にありますが、文芸誌は現在おそらく日本で、この雑誌が唯一ではないかと思います。末永く続いて欲しいですね。

この零合舎では2023年8月現在、『零合』用の原稿を、半年に一度、締め切りを区切って募集しています応募してみたい、でもちょっと傾向がよくわからない、と思う百合書きもいるのではないでしょうか。

この記事では、『零合』創刊号を読んだ著者によるレポートと、それを踏まえて、『零合』が求めている原稿とはどんなものかについて、勝手に考えてみました。これはあくまで著者の主観で、公式とは全く関係がありません。

けっこう値段がするので、気になってはいるけど『零合』を買うのを躊躇している、という人や、『零合』用の原稿を応募してみたい、という人の参考になれば幸いです。

なお、なにしろ創刊号ですので、傾向と言っても、今後売れ行きや読者の声で内容が変わってくる可能性は大です。

この記事は暇つぶし程度にお読みいただけるとよいかなと思います。

『零合』創刊号を読んでみた・感想

『零合』創刊号のアマゾンレビューには賛否両論があったので、自分に合うかな? とちょっと不安でした。

まず、手元に届いた時、思ったよりサイズ感が小さいなと思いました。B5くらいあるのかなと、なんとなく思っていましたが、一般文芸の単行本のサイズです。ソフトカバーです

本文印刷は緑陽社。同人誌の印刷で昔から有名なところです。

遊び紙が黄色の色上質紙(たぶん)なところも、ちょっと同人テイスト。冒頭の宣言文で、百合の同人を標榜しているだけあって、遊び心がある雑誌だなと思いました。

掲載小説数と、ジャンル内訳

『零合』創刊号には、小説が9作載っています。

ジャンル内訳

・現代もの6

・SF2

・ファンタジー1

です。

文体

硬めな作品が多いです。

一部、文学的すぎて、読みづらい作品が幾つかありました。

商業誌経験のある方の作品は、読みやすいものが多い印象。商品としての書き物に慣れていて、何を見せたいかが明白で、読み手に親切な傾向がありました。

読みやすさに特化しているweb小説っぽい体裁の作品はなく、いわゆる文学的な、改行少なめで、じっくり読むのが向いている作品ばかりです。紙の文芸誌の良さがあるなと感じます。

個人差があると思いますが、著者は読了には10時間くらいかかりました。


内容

バッドエンド作品が多いです。

収録9作中、バッドエンドは3作、メリバが3作。

ハッピーエンドなのかな? と思う作品が1作、ハッピーエンドでもバッドエンドでもない淡々とした作品が1作、続き物なので評価できないものが1作でした。

※上記はあくまで著者の主観的な分類です。作者はハッピーエンドとして書いておられるかもしれません。

不穏系、ダーク系の話が好きな人にはおすすめかと思います。

あとは、頭のいい設定のヒロインが多いなと感じました。文体が硬い作品が多いので、コミカル系や残念系の登場人物は出しにくいのかもしれないですね。

甘百合が欲しい方は注意

全収録作が、いわゆる甘々な百合ではありません。

手と手が触れてドキドキとかそういう系統の百合ではないです。ふれあいのシーンも、あっても扇情的には書かれていないので、この創刊号については、糖度はほとんどないです。読後に残るのは、切なさである場合が多いです。

『零合』創刊号から憶測する、『零合』が求める百合原稿

2023年8月現在、零合舎は、文芸誌『零合』に収録する作品を募集しているようです。

プロアマ不問で、『零合』にふさわしいとされる作品を求めているようです。詳細はこちら。

零合舎
原稿募集

では、『零合』にふさわしいとされる作品とは何か?

『零合』創刊号を読んでみた著者が、勝手に考えてみました。

バッドエンドは許容される

これは、創刊号がバッドエンド尽くしであることからも、自明です。

公式の原稿募集のQ&AにもバッドエンドOKと明記してあります

バッドエンドは受けないと言われがちな昨今ですが、どうやらここでは違うようです。

また、収録作「嘘n」ではかなりアグレッシブな描写があるのですが、これもある程度許容範囲内のようです。

ここが、一迅社の『百合姫』が求めている百合とは違う所だなと感じます。『百合姫』に収録される、pixivの百合文芸コンテストでは、残酷描写が禁止で、人が不快になる表現も禁止です。『百合姫』のほうがコンプラに厳しい印象。

※百合文芸コンテストの記事はこちら

肩書きある人有利か

そんなつもりはないのかもしれないですが、創刊号は、かなり作者の肩書きを前面に押し出しているイメージでした。

各作品の始まる前の扉ページに、その作者がいかに権威があるかについて、長めに紹介がしてあります。

もし原稿を応募するなら、自分の賞歴、経歴で自慢できるところがあれば、隠さずアピールしていくといいのかも?

百合における男性キャラの扱いはデリケートに

百合の関係に男性が介入する作品は、その要素を批判するレビューが、ネット上に散見します。アンチが少なからずいる印象です。

零合公式のQ&Aには、男性が出て来てもよいと書いてあります。

そのさい、

敵(往々にして男性)を貶めて描くことを「女性目線」と混同した作品は多々見られます。 キャラクターを「生きた人間」と捉えた上で、エンターテイメントの説得力を意識してください。

零合舎・原稿募集Q&Aより

と書いてあります。

これは難しいですよね。ともすれば、人間味のないキャラクターになってしまいそうです。うまく扱えないかもと思う人は、いっそ出さないほうがいいかもしれないなと感じました。

ロー・ファンタジーより、ハイ・ファンタジー?

創刊号には、一作しかファンタジーがないので、傾向と言ってもあてにならないのですが、そのただ一作のファンタジーは、ハイ・ファンタジーでした。

ファンタジーで応募する場合、ロー・ファンタジーより、世界観を作りこんだ、ハイ・ファンタジーがいいのかな? という印象。

ハイファンタジーの有名どころといえば、東京創元社と、新潮社の日本ファンタジーノベル大賞受賞作あたりかなと思うのですが、零合創刊号掲載作は、どっちかというと、東京創元社のファンタジィっぽい感じでした。

主観的な感想なのですが、『零合』創刊号自体も、日本ファンタジーノベル作品の醸すカオス感というよりは、東京創元社のファンタジィが持つストイックな印象と、親和性が高そうな印象を受けました。

まとめ

『零合』創刊号は、人を選ぶ百合作品も多く、賛否両論あり。全体に硬派な印象で文芸誌っぽい品格があると、個人的には感じました。

原稿を応募するなら、『零合』を一回読んでみるのが一番。

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