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【一次通過率難化】小説現代長編新人賞の傾向と対策

小説現代長編新人賞傾向と対策記事アイキャッチ 各種賞の考察

講談社の小説現代長編新人賞は、近年は応募数が1000を超える人気の小説賞です。

ノンジャンルのエンタメ賞ということで、どんな作品を書いても応募しやすいのが特徴です。

小説現代の一次通過率100%の著者(言いよう)が、一次に通る対策や受賞作の傾向などを考えてみました。

また、この賞は、長らく、一次通過率が高めであることで知られていましたが、近年難化しているようです。どういうことなのか、以下詳しく書いていきます。

なお本当に受賞したい人は、こんな個人ブログを読まずに、受賞者のコメントや公式記事を読む方が参考になると思います。

※個人的におすすめな、小説現代長編新人賞についての公式記事はこちら

小説現代長編新人賞とは

1963年より始まった小説現代新人賞を、2005年にリニューアルし、2006年より開始された、歴史の長い賞です。

エンタメ系の賞で、ノンジャンル。長編を募集する新人賞です。

小説現代新人賞の受賞枠は過去回最大時で3あり(受賞2+奨励賞1)、応募数に対して、デビューの可能性の期待値が高い印象です。

また、一次通過以上で、短い講評文がもらえるのが、作家志望には嬉しい特典です。

一般文芸系で講評を一次でくれるところは、ほかに福ミス、このミスなど数えるほどしかありません。


応募数と通過率(直近回)

回・年度応募総数一次(通過率)二次(通過率)三次(通過率)受賞枠数
第15回/2020年度767125作(16%)16作(2%)6作(0.7%)2(0.2%)
第16回/2021年度966210作(21%)25作(2%)5作(0.5%)2(0.2%)
第17回/2022年度1068139作(13%)13作(1%)5作(0.4%)2(0.1%)
第18回/2023年度1163138作(11%)14作(1%)5作(0.4%)1(0.1%)

小説現代長編新人賞は、一次の通過率が高いと言われていましたが、この数字を見ると、一次通過は近年、難化しているようです。

また、応募数の増加に対して、受賞数はあまりかわらないため、受賞までの確率は非常に低い数字になっています。


受賞作の傾向(直近回)と受賞者年齢傾向

近年、40代以上の応募者のデビューは激少

直近の第14回~17回を調べてみると、受賞者の生まれ年は以下のようになっています。

第14回/2019年度

賞の種類筆名受賞作タイトル(改題後)ジャンル(ざっくり)生まれ年
受賞鯨井あめ「晴れ、時々くらげを呼ぶ」青春1998年
受賞パリュスあや子「隣人X」ややSF1985年 
奨励賞中 真大「無駄花」サスペンス1991年
『晴れ、時々くらげを呼ぶ』

ざっくりあらすじ:死んだ父のある言葉に囚われていた主人公が、クラゲ乞いの儀式を行う不思議女子と出会ったことで成長する話。家族と青春。

『隣人X』

ざっくりあらすじ:難民問題や異文化交流、同調圧力など現代の世相を取り込んだ、少し不思議感のある近未来もの。2023年12月、映画化。

『無駄花』

ざっくりあらすじ:死刑囚・中村は、出版社の社員に頼まれて、これまでの半生をつづることになる。中村と因縁の男・島田と関係がリズム感よく書かれた作品。


第15回/2020年度

賞の種類筆名受賞作タイトル(改題後)ジャンル(ざっくり)生まれ年
受賞珠川こおり「檸檬先生」青春2002年
受賞仲村 燈「桎梏の雪」時代物1982年 
『檸檬先生』

ざっくりあらすじ:青春もの。音や数字、人に色がついて見える共感覚を持つ「私」はクラスメートから疎外されていた。ある日音楽室で同じ共感覚持ちの少女に出会う。少女は檸檬色に見えた。この「檸檬先生」との出会いで、「私」の人生が変わる話。

『桎梏の雪』

ざっくりあらすじ:舞台は江戸時代。将棋もの(ミステリ要素あり)。家元の誇りを賭け、青春を捧げ、戦う若き棋士たち。将棋描写にも定評がある模様。


第16回/2021年度

賞の種類筆名受賞作タイトル(改題後)ジャンル(ざっくり)生まれ年
受賞宇野 碧「レペゼン母」ヒューマンドラマ1983年
奨励賞実石沙枝子「きみが忘れた世界のおわり」ややSF1996年 
『レペゼン母』

ざっくりあらすじ:現代もの。母とダメ息子が、ひょんなことからラップバトルの大会に出ることに。家族にフォーカスした作品。

『きみが忘れた世界のおわり』

ざっくりあらすじ:芸術を通して死者と向き合う話。SF的おもむきあり。


第17回/2022年度

賞の種類筆名受賞作タイトル(改題後)ジャンル(ざっくり)生まれ年
受賞水庭れん「うるうの朝顔」少し不思議系ヒューマンドラマ1995年
受賞朝霧 咲「どうしようもなく辛かったよ」青春1985年 

『うるうの朝顔』

ざっくりあらすじ:離婚したばかりの千晶は、霊園事務所で日置凪という青年に出会う。彼の持っていた朝顔は、花を咲かせると、現実とはほんの少し違う過去をもう一度体験でき、その瞬間から始まっていた心の「ズレ」が直るという。

『どうしようもなく辛かったよ』

ざっくりあらすじ:中三少女たちの卒業までの青春。


第18回/2023年度

賞の種類筆名受賞作タイトル(改題後)ジャンル(ざっくり)生まれ年
受賞桜井真城「雪渡の黒つぐみ」時代物1979年


・『雪渡の黒つぐみ』

ざっくりあらすじ:1625年を舞台に、南部藩の若い忍者を主役に描くエンタメ。得意の声真似で、敵に指一本触れさせない。エンタメ感が強い、と審査員は激賞。


受賞時に40歳を超えている受賞者は14~17回にはいません。

ただし、18回の受賞者は40歳overです(40代)。受賞ジャンルは時代小説。40代以上の応募者にわずかな希望を与えてくれる結果になりました。

この比較的若年の受賞者が多い傾向は、『小説現代』自体が、2020年に、若年層向けへリニューアルしたのも関係しているのかもしれません。

時代小説で受賞した方は、年齢が比較的高いケースもけっこうあるので、ある程度年齢が行ったら、時代小説で勝負するのもいいのかも


青春とSF系が多い傾向

受賞作には、青春とSF系(「少し不思議」くらいのライトな)が目立ちます。

このようなテーマが多く受賞するということは、受賞作品も若年読者向けへシフトしているということなのかもしれません(ただし公式サイトには高年齢応募もウェルカムとは書いてありました)。

舞台となる時代は現代ものが多く、時代物は近年少なめ。ファンタジーは、日本ファンタジーノベル大賞が強いせいか、直近回では出ていない様子です。


作品応募時のコツ

第19回からの重要な変更点

第19回応募から、非常に重要な注意点が2点付加されました。

すでに何らかの新人賞に応募した作品、およびその改稿した作品については、選考対象外といたします」

小説現代2023年10月号p471より

「応募は各回1人1作までといたします」

小説現代2023年10月号p471より

web応募が可能になって以来、気軽に応募しやすくなって、応募数が増えてきたので、選考に苦慮しているのかもしれないですね。

特に、使い回しは禁止と明言してある以上、バレた時点で落選と思われます。素直に新作を送りましょう。

編集部が、過去に他の新人賞に応募した作品かどうかを、どうやって判別していくのかは現時点では不明です。

多くの応募者にとって、長編を書くのはかなりの労力です。それを1回のみしか使えないというのは、かなり痛手ですね。

pdf形式の応募がおすすめ

web応募のほうが郵送より増えてきているようなので、web応募前提で書きます。

2023年現在の応募要項によると、作品の応募体裁が、wordか、txtかpdfを選べるのですが、これはpdfがおすすめです。公式にも、pdf応募を推奨している記述があります。

特に、ルビを振りまくる作風の人は、体裁崩れなどを防ぐために、pdfで応募するのが安心感があってベターです。pdfはデータ上の崩れやミスを確認しやすいんですよね。

web小説のような長文タイトルは避ける

web小説の投稿で、ある程度の成績を出してきている人は、タイトルで内容のすべてを表す感じの、長文タイトルの方が、読まれやすいことをご存じだと思います。

ですが、文学賞においては、ちょっと空気が違う感じがします。

というのも、小説現代長編新人賞の受賞作は、ライト文芸やラノベの棚ではなく、一般文芸の棚に並びます。

web小説で長文タイトルがウケるように、一般文芸にもタイトル付けの暗黙のルールというか、独自の雰囲気があります。

一般文芸の棚に並んでいて、浮かないようなタイトルと、ペンネームで応募することをおすすめします。

タイトルもペンネームも、受賞後でいくらでも変えられると思うのですが、長文タイトルだと、どうしても作品がライトな印象に見えてしまいがちです。

たとえ中身が実質ライトノベルだろうと、文学的なタイトルをつけておいた方が得かと思います。


過去5回くらいの受賞作は読まなくても内容は一通りチェック

直近回の受賞作とテーマや舞台が被った場合、まず受賞できません。

ネタかぶり、テーマ被りを避けるために、全部読まなくてもいいので、直近受賞作のあらすじだけは、必ずチェックしておきましょう。もちろん細かなかぶりを防ぐために、熟読したほうがいいんですけど。

さらに言うなら、講談社が行っている、ほかの文学賞の直近回受賞作ともネタ被りがないことを確認しておくと、なおよいと思います。

また、自分ではわからない自作品の印象などに気づくために、応募前に添削サービスを利用するという手もあります。創作が深まるかもしれません。




選考経過発表日

近年の傾向としては、一次選考は、『小説現代10月号』で最初に発表されます。

そして後日、公式サイトであらためて発表、という流れです。

2023年現在、『小説現代』は紙と電子で発行されているのですが、電子書籍の発売日は、紙の発売日のしばらく後である場合が多いです。

つまり、選考の結果発表日に、最速で自分の当落が知りたい場合、紙版を入手するしかないようです。過去にはweb発表が早い年もあったようなのですが……

なお、webの誘惑に負けて創作さぼっちゃう人は、執筆しかできないツール・ポメラがおすすめ。ポメラの使用感は、ハマる人はハマるかと思います。作品の制作に没頭できるというか。


まとめ

・最近は一次通過率は難化傾向。

・第19回応募から、大きくにルールが変更になりました。応募する人はご注意ください。

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