背景って、描き上がって改めて見てみると、なんだか違和感があったりしませんか。
そもそも、背景の正しい描き方がわからなくて、いつも背景無しイラストや適当な素材でごまかしてしまう、そんな人もいるかもしれません。というかそれはこの記事の著者です。
依頼で背景ありイラストを急に描くことになり、パースを学び直す必要が出てきて、いろいろ本を試してみた結果、個人的に学びが深かった本を、ここでは紹介していきたいと思います。
なお、こういう解説本は、根本的に言っていることは一緒なので、自分に合う本が1,2冊手元にあれば十分かと思います。それをしっかり読んだ後、それでも足りないと思えば、買い足せばよいかと思います。
おすすめ基礎本:パースの基本を押さえられる本
『へたっぴさんのための背景の描き方入門』
この本では、1点透視、2点透視、3点透視、並行投影法が学べます。
この本のいいところは、薄いこと。簡潔なんですね。
120ページくらいしかないし、サイズはA4より小さいので、持ち運びもラク。
それでいて、初心者が間違いやすいポイントの説明が丁寧なところです。
背景を書くには、パースの基本を押さえる必要があります。
パースって、理屈自体は難しくないので、説明されればそんなものかなと思うのですが、実際描いてみると、意外と描けなかったり。
パースを描き慣れていない場合、「説明通りやってるはずなのに……」と首をかしげることもしばしばではないかと思います。
この本は、正しくパースを付けたはずの絵がなぜおかしく見えてしまうのか、初心者が陥りやすいミスを図解で説明してくれます。
たとえば、
- パースがきつすぎるから不自然になる
- 画面の中に消失点はたくさんあっていい
- 基礎を押さえれば嘘のパースを描いてもいい
などなど、初心者の間違いや思い込みを丁寧に正してくれるので、非常に親切な印象。
デメリットはあまりないのですが強いて言えば、
- あくまで初心者向け。基本の基本はわかるのですが、この本の内容を押さえただけで、いきなり複雑な要素を持つ背景を描くのは難しいかも
という点です。
ただ、パースの考え方自体はこの本を読めば大体掴めますし、導入にはちょうどいい難度かなと感じます。
値段もお手頃なので、個人的には買ってよかったなと思います。今も混乱した時、時々おさらいに使っています。
おすすめ応用本:本格的な背景を描く
「ファンタジー背景」描き方教室
これはある程度パースを理解した人が、読むと背景イラストがはかどる本です。
Adobeのphotoshopで描画する前提の本なのですが、自然物、構造物等、色々なモチーフの描き方の説明などは、フォトショ使いでなくても、役に立つ部分が多いです。
イラストの描き方解説本は世にあふれていますが、この本は理論的なところがいいです。
「この部分が寂しいのでちょっといい感じに調整します」などという、ファジーな言い方が一切ありません。
なぜこの描画法を取るのか、なぜこのレイヤー効果を使うのか、など、逐一ロジカルに説明されており、この作者さんの、イラストを描くにあたっての合理的思考自体をなぞることができるほどです。
いかに効果やツールを使いこなして、作画時間を短縮しつつも見栄えのするイラストを描くか。それに特化した本です。
10枚のお手本イラストから、それぞれ違うメソッドを学べます。
炎、水、建物、近未来など、様々なシチュエーションのイラストで、よりリッチ感を増すテクニックが載っています。
イラストに写真合成させる時のコツもあって、そこが個人的にありがたかったです。
商業イラストを描くには、時間をかけすぎてもいけないんですよね。工数のことも考えて作画しないと利益が上がりません。
ですので、作画の効率性を突き詰めていくこの本は、そういう意味でもプロを目指す人向きの内容かと思います。
内容が濃いので、一気読みするのではなくて、描いてみたいものが載っている章を1章ずつゆっくり習得していくのがいいかなと思います。長期学習向け。
この本のデメリット
- 発行年がやや古いので、もっといい描き方が生み出されているかもしれない
- photoshopの基本操作ができる前提で話が進む。ある程度デジタルイラストを描きなれた人向け
- お手本を再現するには、基本的なデッサン力、パース力が相当必要。
上記のような難点はあるものの、個人的には、これほど親切にプロイラストレーターのマインドと技術が説明されている本は稀かと思います。
うさんくさい言い方になるんですけど正直、こんなに教えてくれるんだ、と、読んでいてかなり満足感がありました。
なお、photoshopについては解説本がいろいろ出ているので、フォトショビギナーはまず自分に合いそうな本で基本操作を押さえてから(ネットより直接本屋で見たほうがいいです)、背景解説本に取り組むとスムーズです。
なお、photoshopは、イラスト描きだけでなく、デザイン作成などにも向いているので、使いこなせると仕事の幅が広がるかなと思います。
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世界観の広がりを表現する本
ものがたりの家
イラストを描くには、想像力だけではなくて知識も必要です。自分がインプットしたものからしか、アウトプットはできません。
例えば家を描くにしても、どういう気候の場所の建物で、どういう用途で使われているかなどをきちんと設定することで、リアリティが増します。
そういう点において参考になるのが、『ものがたりの家』です。
『ものがたりの家』は、いろんな立場の人が住んでいる、ファンタジー上の家のイラスト集です。
どういう人が住んでいて、どうやって使われていて、どういう歴史があるのか。そういう目に見えない設定を考える楽しさを教えてくれる本です。
家ってこんなにバリエーションがあっていいんだ、とイラスト鑑賞しているだけでも楽しいですし、仔細な設定を組むことが、住人の息遣いまで感じられる創作につながることが学べます。
まとめ
パースを学んでいくと、背景って複雑そうに見えるけど、結局一つ一つの物体のパースをなぞっていく作業であって、根気があれば細かいものを描くのはそう難しくない、と思えてきます。
背景があると絵がリッチに見えます。また、背景が描けると表現の幅、仕事の幅が広がりやすいので、描けるに越したことはないのではないでしょうか。
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