(コバルト)短編小説新人賞は、短編新人賞の中でも有名で、歴史も長い賞です。
どうやったら賞が取れるかなと考えている人も少なくないと思います。
この記事では、コバルト(というかオレンジ文庫)好きの著者が、傾向などを考えてみました。
直近回の研究になります。なお、ブロガーというのは、なにかしら応援してもらえると、がぜん研究を続けようかなという気になります。
この記事あくまで個人の主観です。話半分に見ていただければと思います。無料で読める情報に、高いレベルを期待しないほうがいいです。
応募要項は必ず最新のものを公式でチェックしてから応募することをおすすめします。
短編小説新人賞とは?
集英社のオレンジ文庫が、募集している短編新人賞です。
これまで隔月募集だったのですが、第230回以降は3か月に一度の募集に切り替わりました。
つまり、1回当たりの応募数が増え、さらに競争率が上がることが予想されます。
この賞は、もとは同出版社の別レーベル・コバルト文庫が主催していたのですが、現在は、応募フォームもオレンジ文庫のサイトへ移行しています。今後はオレンジ文庫サイトで、メインに情報を発信していくようです。
なお、コバルト文庫の後継がオレンジ文庫だと思ってだいたいOKかと思います。ですので、この2つのレーベルの傾向は、重なる部分が多いです。
最近は入選のみで、佳作はあまり出ていません。実質、受賞枠は1の時が多いです。
応募は、web投稿のみです。231回から郵送応募はNGになりました。
ところで、この賞は、締切日を過ぎて応募してしまったら、自動的にその応募作は次の募集回の選考へ回してもらえる、親切仕様になっています。
なお、web投稿の場合、
テキスト形式でご応募いただきますので、ファイル形式変換に伴うルビの取り込みによる規定枚数オーバーに関しては許容範囲となります
オレンジ文庫HPより
だそうです。
こういう人におすすめの賞
比較的ノンジャンルと言っていい賞なので、「短編を書いたけど、どこに送ろうか」考えている人におすすめです。
また、小説サイト・エブリスタでは、「超・妄想コンテスト」という短編賞が定期的に行われているのですが、その規定文字上限数(8000字)が、この短編小説新人賞の規定枚数に近いです。
「超・妄想コンテスト」ではダメだったけど、自分の短編が、ほかの出版社ではどう評価されるのだろうか、と知りたい人におすすめです。
また、カクヨムの「Web小説短編賞」なども規定文字数が近いです。
短編小説新人賞は、作品の使いまわしについて言及がないので、使いまわしは禁じられていないようですが、応募する時は改稿して出しましょう。
どこかで落ちた作品をそのまま送っても、望みは薄いかと思います。
せっかく労力を割いて送るのであれば、ダメなところを直して、受賞の確率を少しでも上げたほうがよいかと思います。
応募時から結果が出るまでは、webサイトに置いた作品のほうは、非表示にしておきましょう。
受賞すると何がある?
この賞で、最終選考残留or受賞すると、オレンジ文庫サイト上で、作品が公開されます。
また、最終選考残留or受賞で、編集部からの講評がもらえます(web発表)
編集部からの講評は、2024年現在、座談会形式です。
同じ座談会形式で発表される星海社のものよりは、マイルドなテンションで行われる印象です。どうも座談会メンバーは、語り口から推測すると、女性の編集者が多そうな印象。
・他に講評してもらえる賞を探している人は、こちらの記事もあります↓
ところで、短編小説新人賞の受賞作は、webで作品を発表されるときに、表紙イラストを付けてもらえます。うれしい人にはうれしい特典かと思います。
なお、この賞を受賞しただけでは、作家デビューをすることはできないですが、この賞を取った後、作家デビューした人は、集英社をはじめ、いろいろな出版社で活躍しているようです。
受賞者例
・宮島未奈(宮島ムー)
短編小説新人賞受賞→女による女のためのR-18文学賞受賞(新潮社)→ 『成瀬は天下を取りに行く』(新潮社)でデビュー
ざっくりあらすじ:青春もの。主人公の成瀬あかりが、痛快クセ強キャラながらも、独自のルールで生きていて好感が持てる、元気が出る、という評判。この作品は、2024年の本屋大賞に選ばれたので面白さは、ある種折り紙付きかも。
・泉 サリ(シラナイカナコ)
短編小説新人賞受賞→2021年ノベル大賞 大賞受賞
ノベル大賞の受賞作:『みるならなるみ』
ざっくりあらすじ:ガールズバンドと新興宗教と青春。
・柳井 はづき
短編小説新人賞受賞→2021年ノベル大賞 準大賞受賞
ノベル大賞の受賞作:『花は愛しき死者たちのために』
ざっくりあらすじ:腐敗しない死美人エリスをめぐる話。ややゴシックホラーなおもむき。
・松田 志乃ぶ
短編小説新人賞受賞→2005年ノベル大賞佳作入選
最近の作品:『仮面後宮 女東宮の誕生』
個人的おすすめ作品:『かぐや姫三世 わたしを月まで連れていって!』がおすすめ。
ちょっと古い作品ですが、溺愛路線が強くなっていたコバルト文庫末期の作品では、珍しくコメディ感が強くて楽しい作品。※コバルト文庫はオレンジ文庫の前身のようなものです。
短編小説新人賞受賞→ノベル大賞に入賞→オレンジ文庫で活躍、というパターンが多いです。
応募数は?
短編小説新人賞の応募数は、非公開です。
参考になるかわかりませんが、同オレンジの長編向け賞であるノベル大賞は、2023年回は1743。一次通過数は799でした。
どんな作品が入賞しているのか
男性主人公は許容
・230、229、228、226、224、221、220、219、217、216回の入賞作は、男性主人公です。
むしろ男性主人公がトレンドなのかな? と思えるほど、男性主人公ものは盛んです。
ノベル大賞のほうは、女性主人公が多めなので、そのあたりがちょっと違うようです。
比較的オトナ展開でも許容
・224回受賞作は、公営の運試しに行き、お金も使っている描写があります。
・215回受賞作は、倦怠期の男女の、わりとただれた関係が描かれています。
ホラー・バッドエンドでも許容
・主人公が(おそらく)落命したと思われる、後味悪い系のオチでも許容範囲のようです(221回)
・219回、228回受賞作は、ホラーみがありました。
現代ものでもファンタジーでも許容
・現代もののほうが多く受賞していますが、ファンタジーでの受賞例もあります。
222回はファンタジーが受賞しています。
ただし短編の賞なので、ファンタジーで高い水準に持っていくのは、現代ものより世界観説明に割くページ数が多くなりがちで、文字数上限との闘いになりがちのようです。
GL(ガールズラブ)はOK?
・直近回で受賞作にGLは見当たらないようですが、228回の最終候補作では、GLというか、女性同士の連帯、結びつきの描写があります。
我こそはと思う人は、GLで風穴を開けてみては。
というか、『マリみて』や『楽園の魔女たち』といったガールズライフを書いた作品は、コバルトでは結構ありましたので、特に珍しいカテゴリではないかと思います。
ちなみに2023年のノベルの佳作『私のマリア』は、百合作品です。
なお、かなりイヤミス百合の感が強いです。合うか合わないかは、人によって、かなり意見が別れるかな? という印象。
気になる方は、まずちょっと本屋などで、初めのほうをためし読みしてみることをおすすめしたいです。
- 『私のマリア』
時代物の受賞作あり
- 230回の佳作は、能の演目「望月」に題を取った作品。
ちょっと何時代かわからないのですが、本格的な時代物です。主人公は男性で一人称。
なお、この佳作にはベースになる古典がありました。
ベースになる話がある場合の取り扱いについて、この佳作の講評ページに注意点が書かれていましたので、載せておきます。
元ネタがあること自体は構わないのですが、こと応募作に関しては、それが分かるようにしておいてほしかったですね。作品は多くの読者が読むものという意識は、いつも持っておいてほしい。
230回オレ短講評内の編集さんの言葉より
既存の作品を下敷きにした作品を応募してもOKなものの、応募する場合は、その旨、応募時に書いておいて欲しいようです。
自分のなかでは、これは誰もが知っている古典(や情報)だ。と、思っていても、誰もが知っているというわけではないと思うので、気を付けたいですね。
結果発表はいつ?
発表場所は、公式サイトによると「オレンジ文庫のチラシ紙上、およびオレンジ文庫公式ホームページで発表予定」だそうです。
例えば231回は、6月30日に〆切で、10月に発表でした。大体、締め切ってから4~5か月後に発表ということですね。
webコバルトで発表されていたころは、発表予定月の第1金曜に結果が出ることが多かったようです。
ですが、オレンジ文庫チラシ上で受賞者発表、その後オレンジ文庫HPで選考結果発表に変更になった模様です。(オレンジでの発表になってから間がないので、これは今後変わってくるかもですが……)
いち早く発表日の情報を入手するには、オレンジ文庫公式Xを見るといいかもしれません。
賞対策
オレンジ文庫を創刊時から時々買っている著者おすすめの、オレンジ作品
短編小説新人賞はノベル大賞(=書籍デビュー)のための前哨戦みたいな部分があります。
上で書いた通り、短編小説新人賞受賞者から、ノベル大賞受賞者が出るケースがわりとあるからです。この二つの賞は関連性が深いと考えられます。
ノベル大賞受賞作は、オレンジ文庫から出版されます。そのため、オレンジ文庫の人気作・ノベル大賞受賞作を読んで、オレンジ文庫全体の雰囲気を研究するのが、近道かな? と個人的には思います。
そこで、オレンジ文庫を創刊時から時々買っている著者おすすめの、オレンジ作品数点紹介してみます。
オレンジ関係の賞に応募する人は、ネタかぶりを防ぐため、シリーズ化されているほど人気の作品は、ある程度押さえておいた方が無難かなと思います(特に同じジャンルを書く場合)。
・『宝石商リチャード氏の謎鑑定 』
アニメ化もされた人気シリーズです。
2015年から続いている息の長い作品。ご存じの方も多いのですが、微BLです。社会問題にも切り込んだりして、骨太で真面目な作品という印象。このくらいのBL描写なら、オレンジ文庫で許容されると考えられる指針になる作品かと思います。
この作品はBLみは少なめなので、普段BLになじまない方にもおすすめできます。
オレンジ文庫の前身ともいえるコバルト文庫は、けっこうBL作品がありました。この作品を読んでいると、オレンジも、その雰囲気を受け継いでいるかな? と感じられます(個人的印象)。
読むのは面倒だという人は、アニメ版もあります。
・宝石商リチャード氏の謎鑑定 Blu-ray 第1巻
・『時をかける眼鏡』シリーズ
過去の世界(中世っぽい感じ)に飛ばされた主人公の西條遊馬が、謎を解きながら国をよくしていくタイムスリップミステリ。
オレンジは女性主人公が多いですが、この作品は男性主人公です。
短編小説賞はこのところ男性主人公での受賞が目立つので、何かしら参考になるかもしれません。ミステリですがファンタジーとしての骨子もしっかりした良作かと思います。
・なお、女子主人公について研究してみた記事はこちら↓
ほかの短編探してる人向け
まとめ
・短編小説新人賞受賞は、比較的どのジャンルでも受賞例があるようです。
・短編小説新人賞受賞の受賞者が、同じ出版社のノベル大賞を受賞する傾向が強いです。
・なお、作品の添削をお考えの人にはこの記事をどうぞ↓
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