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あたらよ文学賞の傾向と対策を考えてみた

あたらよ文学賞について考えてみた記事アイキャッチ 各種賞の考察

あたらよ文学賞は2023年から開催の短編小説賞です。

2025年は3回目の開催になります。第3回の募集終了しました

そんなあたらよ文学賞は、受賞すると、作品が文芸ムック『あたらよ』へ掲載されます。

ジャンル不問ということで、応募を検討しやすい賞の1つかもしれません。

今回は、そんなあたらよ文学賞について、実際に『あたらよ』創刊号を買って読んでみて、傾向と対策を考えてみました。

なお、そんな人はいないと思いますが、タダで落ちているこういった情報は、鵜呑みにしないほうがいいです。応募にあたっては、必ず公式の案内を見てください。

『文芸ムックあたらよ』とは

『文芸ムックあたらよ』はざっくりこんな感じです。

  • 2023年に創刊
  • 創刊号は、第1回あたらよ文学賞の受賞作が掲載されている
  • 有限会社EYEDEARが発行する文芸誌

有限会社EYEDEARは、神戸にあり、デザイン事務所・出版社・経理事務所を営んでおいでのようです。

創刊号の内容は、短編小説のほか、エッセイ、短歌、書評、対談など。幅広い創作の発表の場になっているようです。

この『あたらよ』の3号への掲載をかけた賞レースが、2025年6月30日〆切の、第3回あたらよ文学賞です。

なお、あたらよ文学賞を含む、こちらの会社の最新情報は、noteかXのアカウントを追っていくと良いかと思います。

あたらよ文学賞の原稿募集も、noteの記事内からリンクした応募フォームから応募する形式のようです。

あたらよ文学賞の特徴

講評がうれしい

この賞に応募し勝ち上がっていくと、1次通過、2次通過、最終選考の3段階で講評がもらえます(最終まで残ると3回講評がもらえるシステム)。

また、1次落ちの作品の一部の作品と、2次落ちのすべての作品にも講評が入ります。

一般文芸の1次通過で講評をくれるところは少ないので、講評が欲しい人には相当にうれしい手厚さです。

講評は、有限会社EYEDEARnote上で発表。

また各回の最終選考の模様は、『文芸ムックあたらよ』のそれぞれの年の号に掲載されており、こちらもかなりの紙面を割いて候補作品について検討されているので、選考に残れば残るほどたくさん講評がもらえる点も魅力です。

講評を見ていると、わりと尖っていそうな作品にも、比較的向き合ってくれる印象。

過去の受賞作を見ていると、ジャンルが幅広いです。

どこのジャンルに送ったらいいのかわからないけど、面白くはある作品を書いてしまった時、応募先の候補として検討してみてもいいかも。

第3回のテーマ・賞枠※募集終了

まずは2025年開催の第3回では、どんな賞があるのか見ていきます。

【テーマ】

『嘘』
定義に囚われない面白い小説であればジャンルは問わない。

【賞】

大賞(1作品)図書カード10,000円分+『文芸ムック あたらよ 第三号』に掲載

優秀賞(数作品)図書カード3,000円分+『文芸ムック あたらよ 第三号』に掲載

佳作(数作品)『文芸ムック あたらよ 第三号』に掲載を検討

※該当作品が選出されない場合もあります。

有限会社EYEDEARのnote記事より

  • 規定文字量:3000字以上15000字以内

情報は更新されるものなので、細かい規定は、有限会社EYEDEARのnote記事をご覧ください。


応募注意点

  • 応募数:1人1作まで
  • 同人誌、自費出版、WEBに既発表の作品、他の文学賞への応募作品は対象外
  • 応募フォームに有限会社EYEDEARの出版物の感想を、書き入れる部分が有(第三回応募からマスト

web発表済み作NGなので、1回でも小説投稿サイトに上げた作品は、おそらく規定違反になります。また、他文学賞への応募作品もNGなので、完全新作で臨め、ということみたいです。

EYEDEARの出版物の感想は、第3回応募時からマストになりました。

『あたらよ』だけでなく、

の感想でもOKのようです。

過去回では、一次通過者と一次落ちの一部に講評を出している、という応募作へのサポートの手厚さもあり、賞の運営はかなり負担が大きい様子ですので、発行物の購入支援は賞の維持のための投げ銭と同じかもしれません。

別にそこまでの気持ちはない、という人でも、賞を狙っていくなら、過去回の賞の様子を見るために、既刊を見ておくにこしたことはありません。

どの号にも、それぞれその回の受賞作が載っているので、1冊くらいは読んでおいたほうが、安心感がありそう。


応募数は? 発表はいつ?

結果は有限会社EYEDEAR のnoteの記事上で発表のようです。

1次発表日2次発表日最終結果
第1回テーマ:「夜」8/25(496作→67作)9/17(67作→15作)10/15(15作→10作)
第2回テーマ:「青」8/30(453作→52作)9/21(52作→14作)10/5(14作→9作)
第3回テーマ:「嘘」8/28(340作→44作)9/19(44作→13作)10/4(13作→8作)

第1回応募数が多かったのは、複数作応募が認められていたから、みたいです。

応募者自体は2回のほうが多いようです。

第3回は、お題が難しかった&感想がマストになった、というのが特徴です。

なお、発表や各種進捗情報もnoteで流されることが多いです。ただ、第2、3回は、Xでの発信が多めでしたので、そちらもあわせてチェックしておくといいかもしれません。

賞へ応募する方は、noteとXのアカウントを作って有限会社EYEDEARのアカウントをフォローしておくと、応募から結果閲覧までがスムーズかなと思います。youtubeのアカウントも作り「物語ジャンキー」をフォローしておくと、さらに万全かと。

noteわかんない人こちら↓


賞傾向と対策

どんな年齢だと有利か

「年齢と性別で落とすということはありません」

と、「物語ジャンキー」動画内で、断言されていました。

どんな年齢、性別でも安心して応募できそうです。


第1回の結果

  • テーマ:「夜」
  • 応募数:496
  • 入賞数:10(大賞・1、優秀賞・4、佳作・5)
  • 応募数に対する、文芸ムック『あたらよ』への掲載率:約2%

ほかの短編賞と比較してみると、例えば、「小説でもどうぞ」で受賞枠を得るよりは難しく、「超・妄想コンテスト」の賞金圏に入るよりは緩いです。

第1回あたらよ文学賞の大賞作はSF

タイトルは、「うきうきキノコ帝国」

知性のあるキノコがいる星にやってきてしまった少年の話です。

タイトルに「うきうき」とついているのですが、本編はまったく「うきうき」とかけ離れている感じが、主人公の、「思ってたんと違う」感を秀逸に表している印象です。

ほか、受賞作のジャンルは、青春、ヒューマンドラマ、お仕事もの、不思議な架空生物の話、児童文学系ファンタジー、トンチキ系、和風ヒストリカル、など、かなりばらけています。

賞の第1回ということで、『あたらよ』という文芸誌をどういう方向性で売り出すのか、どういう作品を載せるのが今後にとってベストなのか、選考委員も手探りの状態で選考している感が、座談会のページから伝わってきました。

とはいえ、かなりの倍率であることには変わりないようです。

この賞と似たような規定文字数の賞の例↓



第2回の結果

  • テーマ:「青」
  • 応募数:453
  • 入賞数:9(大賞・1、優秀賞・3、佳作・5)
  • 応募数に対する、文芸ムック『あたらよ』への掲載率:約2%

大賞は、ファンタジーSFです。

タイトルは、「青い血のナルカ」

霊長蛸という海の生き物を助けた主人公の青年の話。多様性について考えさせられるのですが、それでいて教訓的ではなく、共感度の高いストーリーです。

ほか、受賞作のジャンルは、SF鯖、人が木になる)、現代(推し活、ジュニアアイドル、幽霊、おなかの中に海ができる話)、ヒストリカル(明治の藍染、儒教風ファンタジー)と、かなりさまざまです。

この回は、SFジャンルでの争いが熾烈だったようです。

応募数に対しての入賞割合は、過去回とあまり変わらない様子です。

第3回の結果

  • テーマ:「嘘」
  • 応募数:340
  • 入賞数:8(大賞・1、準大賞・1、優秀賞・2、佳作・4)
  • 応募数に対する、文芸ムック『あたらよ』への掲載率:約2%

大賞は、コメディです。

タイトルは、「犬は吠えているか」

一躍演劇界で有名になった男と、彼を尊敬する門下生の視点が、途中から切り替わることで展開するコメディ。

応募数に対しての入賞割合は、過去回とあまり変わらない様子です。

この年は、最終選考委員が大きく入れ替えになったことと、準大賞という賞が特別に設けられたことが、前回から特に変わっている点です。

賞傾向と対策

第2回は、「一次・二次選考は完全匿名性」との表記が、主催者のXのポストにありました。ネームバリューとSNS影響力で選考を抜けることはできないようです。

賞への対策としては、

  • 文芸誌『あたらよ』の中の「最終選考会」のページを読む
  • 受賞作を読む
  • 選考委員の著作を読む

この3つを行うと掴みやすいかなと思います。

特に最終選考会のページを読むと、この賞において何が重視されているのか、各選考委員が何をベースに応募作を評価しているのか、がわかりやすいです。

受賞作を実際に読んでみるメリットは、賞のレベル、過激描写などの許容範囲を知ることができる点です。

また、受賞作を研究することで、受賞作と自分の応募作が被らないようにすることができます。

書き上げた後に知る内容被りは本当ににつらいので、回避できるリスクに対してはあらかじめ対策しておくに越したことはないです。

同じ匿名性だとこういう賞もあります↓



第一回の最終選考会のページで気になったワード

  • 「(この作品は)エンタメ性が強すぎる」
  • 「(この作品は)王道すぎる」

確かに第1回受賞作は、エンタメ感というよりは、もうちょっと硬質で、文学感の強い作品が多かったかも、という印象でした。

ライト文芸やライトノベルとはノリがちょっと違うのかな? と個人的には感じました(主観)。

2号もおおむねその雰囲気を踏襲している印象。しかし3号ではコメディが大賞を取り、またこの賞は渾沌としてきた印象があります。

ただ、まだ3回目賞ということもあり、『あたらよ』という文芸誌自体のカラーが決まりきっていない感じはあるので、何がカテエラなのか未知数である部分はあります。

noteでの最終講評を見る印象では、「面白さ」を重視した選考という印象です。

「じゃあ面白さって何?」というところにも、『あたらよ第二号』のp161あたり(選考の座談会記事)で触れられていたりするので、その講評や受賞作などを読んで、自分なりに研究してから送るといいかも。

どの号から読んだらいいの?

『文芸ムックあたらよ』は2025/12月時点では、3号まで出ています。

どの号も1冊で内容が完結しています。

ですので、どちらから読んでも、情報が足りなくて困るということはありません

各号のテーマは以下の通りです。

号数テーマ
創刊号
2号
3号


気になったテーマがある人は、その号から読むといいかと思います。

あたらよ文学賞や『あたらよ』というムックについて順を追って知りたい堅実派

「創刊号→2号3号」の順がおすすめ。

時間がなくて、あたらよ文学賞とこのムックの最新状況を素早く知りたい効率重視派

「3号→2号創刊号」の順がおすすめ。

上記のどっちでもないがとりあえず読んでみようかな、というアウトロー

2号から読んでみては

個人的おすすめポイント(創刊号)

  • テーマは「夜」
  • 受賞作の読み応え
  • 「こはねに勝てないなら死ぬ」「夜が冷たく忍びよる」おすすめ
  • 表紙がキレイ

第1回受賞作だと、以下の2作が個人的におすすめ。

「こはねに勝てないなら死ぬ」は受賞作のなかで、ひときわエンタメ性が高い作品。夜の世界を生きる主人公の、生命力あふれる強いキャラクター性が魅力。

「夜が冷たく忍びよる」は、noteの講評でも書かれているのですが、第1回の募集テーマである「夜」を、とても巧みに、自然に絡めているファンタジー。やや児童文学風。


個人的おすすめポイント(第二号)

  • テーマは「青」
  • 見どころは、最終選考会の様子を書き起こしたページ
  • 寄稿陣の幅の広さ
  • 受賞作の読み応え

29ページという超ボリュームを割いて、最終候補作について作ずつ討議されているさまは、ちょっと他の文芸誌では見られない熱量です。

またこの号は、有名時代小説家も加えた豪華メンバーの座談会に始まり、芥川賞ノミネート作家や読書家芸人、アマチュアまで、多様な書き手が、短編小説やエッセイ、短歌などを寄稿しています。

本文用紙がクリーム色に変更になっており、目に低刺激になった点が個人的にありがたい印象。

なお、第2回の、あたらよ文学賞の受賞作9作も掲載されています。

第2回の受賞作も受賞作だけあってそれぞれクオリティが高いです。1号とはまた違う感じで、エッジの利いた作品が多く、作品ごとに驚きがあります。

どの2号を買うか迷ってる人には、百合(シスターフッド)が多めに入っているのは2号だ、とお伝えしておきます。

個人的おすすめポイント(第三号)

  • テーマは「嘘」
  • 前号よりさらにボリュームアップした最終選考会の様子を書き起こしたページ
  • エッセイが面白い
  • 受賞作の読み応え
  • コメディが大賞に輝いた賞とはどんなものかを知りたい人におすすめ

最終選考会のページは、前号よりページ数が増えています。このページだけですでに一本の作品みたいな様子です。

この号の特徴は、エッセイが面白い印象が強いことかなと感じます。

嘘にまつわる民俗学エッセイ、家族間の闇と光について書いたエッセイ、こじらせた青春の恋愛失敗談、小説講座で同級生に批判された話など、いろいろあるのですが、何がいいかというと、エッセイ単体で味わえる作品が多いことです。

世の中にはときどき、作家の情報をあらかじめ知っていないと理解しづらいエッセイがありますが、そういうハードルがこの本にはなく、そのエッセイの書き手について知らずに読んでも、単純に読み物として楽しい作品がそろっています

また、この号はあたらよ文学賞(第三回)の結果が載っている号です。第三回はコメディが受賞しました。

コメディが大賞を取る、ということ自体が珍しい印象です。じゃあ大賞を射止めた短編コメディとはどんなものだったのか? について知りたい人には特におすすめかなと思います。

受賞作の個人的おすすめは、「ゾウは嘘つき」です。

まとめ

対策はこれがおすすめ

  • 文芸誌『あたらよ』どの号でもいいの「最終選考会」のページを読む
  • 受賞作を読む
  • 選考委員の著作を読む

ただここまで書いておいてなんですが、第二号の編集後記によれば、傾向と対策はしないで欲しい、とのことなので、しても無駄かもしれないですね。実際、第三回と第二回では、かなり受賞作の様子が変わった印象です。

とはいえ、各号の最終選考会のページは、物書きをする人にとっては学びが深いので、読んでみると得るものがあるかも。

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