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あたらよ文学賞の傾向と対策を考えてみた

あたらよ文学賞について考えてみた記事アイキャッチ 各種賞の考察

あたらよ文学賞は2023年から開催の短編小説賞です。

2024年は2回目の開催になります。※第2回の募集は終了しました2025年に3回目の開催が決定しています。第3回のテーマは「嘘」です(応募開始日未定)

そんなあたらよ文学賞は、受賞すると、作品が文芸ムック『あたらよ』へ掲載されます。

ジャンル不問ということで、応募を検討しやすい賞の1つかもしれません。

今回は、そんなあたらよ文学賞について、実際に『あたらよ』創刊号を買って読んでみて、傾向と対策を考えてみました。

なお、そんな人はいないと思いますが、タダで落ちているこういった情報は、鵜呑みにしないほうがいいです。応募にあたっては、必ず公式の案内を見てください。

『文芸ムックあたらよ』とは

『文芸ムックあたらよ』はざっくりこんな感じです。

  • 2023年に創刊
  • 創刊号は、第1回あたらよ文学賞の受賞作が掲載されている
  • 有限会社EYEDEARが発行する文芸誌

有限会社EYEDEARは、神戸にあり、デザイン事務所・出版社・経理事務所を営んでおいでのようです。

創刊号の内容は、短編小説のほか、エッセイ、短歌、書評、対談など。幅広い創作の発表の場になっているようです。

この『あたらよ』の2号への掲載をかけた賞レースが、2024年6月30日〆切の、第2回あたらよ文学賞です。

なお、あたらよ文学賞を含む、こちらの会社の最新情報は、noteかXのアカウントを見ると良いかと思います。

あたらよ文学賞の原稿募集も、noteの記事内からリンクした応募フォームから応募する形式のようです。

第2回のテーマ・賞枠※募集終了

まずは2024年開催の第2回では、どんな賞があるのか見ていきます。

【テーマ】

『青』
定義に囚われない面白い小説であればジャンルは問わない。

【賞】

大賞(1作品)図書カード10,000円分+『文芸ムック あたらよ 第二号』に掲載

優秀賞(数作品)図書カード3,000円分+『文芸ムック あたらよ 第二号』に掲載

佳作(数作品)『文芸ムック あたらよ 第二号』に掲載を検討

※該当作品が選出されない場合もあります。

有限会社EYEDEARのnote記事より

  • 規定文字量:3000字以上15000字以内

細かい規定は、有限会社EYEDEARのnote記事をご覧ください。


応募注意点

  • 応募数:第1回・1人3作まで→第2回・1人1作に変更
  • 同人誌、自費出版、WEBに既発表の作品、他の文学賞への応募作品は対象外
  • 応募フォームに『文芸ムック あたらよ』創刊号の感想を、任意で書き入れる部分が有

web発表済み作NGなので、1回でも小説投稿サイトに上げた作品は、おそらく規定違反になります。また、他文学賞への応募作品もNGなので、完全新作で臨め、ということみたいです。

「創刊号の感想」は強制ではないのですが、創刊号と第2号にはそれぞれその回の受賞作が載っているので、読まないで応募するより、一読しておいたほうが、賞対策として万全なのは間違いないかと思います。

講評がうれしい

第1回、第2回は、1次通過者全員(と、1次落ちの作品の一部)に、note上と「物語ジャンキー」内で、講評が入りました。(詳しくは公式noteか物語ジャンキーをご覧ください)

なかなか一般文芸の1次通過で講評をくれるところは少ないので、応募する人はうれしいかと思います。

また各回の最終選考の模様は、『文芸ムックあたらよ』のそれぞれの年の号に掲載されており、こちらもかなりの紙面を割いて候補作品について検討されているので、選考に残れば残るほどたくさん講評がもらえる点も魅力です。

講評を見ていると、わりと尖っていそうな作品にも、比較的向き合ってくれる印象。過去の受賞作を見ていると、ジャンルが幅広いです。

どこのジャンルに送ったらいいのかわからないけど、面白くはある作品を書いてしまった時、応募先の候補として検討してみてもいいかも。

応募数は? 発表はいつ?

結果は有限会社EYEDEAR のnoteの記事上で発表のようです。

1次発表日2次発表日最終結果
第1回テーマ:「夜」8/25(496作→67作)9/17(67作→15作)10/15(15作→10作)
第2回テーマ:「青」8/30(453作→52作)9/21(52作→14作)10/5(14作→9作)

第2回は応募数自体は少なくなっていますが、これは1人1作という応募規定の変更の影響も大きいかと思います。応募者自体は2回のほうが多いようです。

なお、第1回では、最終結果発表の時点で、受賞者のコメントが寄せられているので、それより前に、最終選考通過者には連絡が行ってるようでした。それに対して、第2回は事前通知なしで最終発表だったようです。

この辺りの動きは、年によって流動性がありそうです。

第1回は、最終選考に臨む作品は、作品の推敲データを改めて送付したようで、その時点で初期応募時とタイトル名が変わっていた、というエピソードが座談会の中に書かれています。

なお、発表や各種進捗情報もnoteで流されることが多いです。ただ、第2回は、Xでの発信が多めでしたので、そちらもあわせてチェックしておくといいかもしれません。

賞へ応募する方は、noteとXのアカウントを作って有限会社EYEDEARのアカウントをフォローしておくと、応募から結果閲覧までがスムーズかなと思います。youtubeのアカウントも作り「物語ジャンキー」をフォローしておくと、さらに万全かと。



賞傾向と対策

どんな年齢だと有利か

「年齢と性別で落とすということはありません」

と、「物語ジャンキー」動画内で、断言されていました。

どんな年齢、性別でも安心して応募できそうです。


第1回の結果

  • テーマ:「夜」
  • 応募数:496
  • 入賞数:10(大賞・1、優秀賞・4、佳作・5)
  • 応募数に対する、文芸ムック『あたらよ』への掲載率:約2%

ほかの短編賞と比較してみると、例えば、「小説でもどうぞ」で受賞枠を得るよりは難しく、「超・妄想コンテスト」の賞金圏に入るよりは緩いです。

とはいえ、かなりの倍率であることには変わりないようです。

第1回あたらよ文学賞の大賞作はSF

タイトルは、「うきうきキノコ帝国」

知性のあるキノコがいる星にやってきてしまった少年の話です。

タイトルに「うきうき」とついているのですが、本編はまったく「うきうき」とかけ離れている感じが、主人公の、「思ってたんと違う」感を秀逸に表している印象です。

ほか、受賞作のジャンルは、青春、ヒューマンドラマ、お仕事もの、不思議な架空生物の話、児童文学系ファンタジー、トンチキ系、ヒストリカル、など、かなりばらけています。

賞の第1回ということで、『あたらよ』という文芸誌をどういう方向性で売り出すのか、どういう作品を載せるのが今後にとってベストなのか、選考委員も手探りの状態で選考している感が、座談会のページから伝わってきました。

第2回の結果

  • テーマ:「青」
  • 応募数:453
  • 入賞数:9(大賞・1、優秀賞・3、佳作・5)
  • 応募数に対する、文芸ムック『あたらよ』への掲載率:約2%

大賞は、ファンタジーです。

タイトルは、「青い血のナルカ」

霊長蛸という海の生き物を助けた主人公の青年の話。多様性について考えさせられるのですが、それでいて教訓的ではなく、共感度の高いストーリーです。

応募数に対しての入賞割合は、第1回とあまり変わらない様子です。

賞傾向と対策

第2回は、「一次・二次選考は完全匿名性」との表記が、主催者のXのポストにありました。ネームバリューとSNS影響力で選考を抜けることはできないようです。

賞への対策としては、

  • 文芸誌『あたらよ』の中の「最終選考会」のページを読む
  • 受賞作を読む
  • 選考委員の著作を読む

この3つを行うと掴みやすいかなと思います。

特に最終選考会のページを読むと、この賞において何が重視されているのか、各選考委員が何をベースに応募作を評価しているのか、がわかりやすいです。

受賞作を実際に読んでみるメリットは、賞のレベル、過激描写などの許容範囲を知ることができる点です。

また、受賞作を研究することで、受賞作と自分の応募作が被らないようにすることができます。

書き上げた後に知る内容被りは本当ににつらいので、回避できるリスクに対してはあらかじめ対策しておくに越したことはないです。

なお、同じ匿名性だとこういう賞もあります↓



最終選考会のページで気になったワード

  • 「(この作品は)エンタメ性が強すぎる」
  • 「(この作品は)王道すぎる」

確かに第1回受賞作は、エンタメ感というよりは、もうちょっと硬質で、文学感の強い作品が多かったかも、という印象でした。

ライト文芸やライトノベルとはノリがちょっと違うのかな? と個人的には感じました(主観)。

とはいえ、2号ではライト文芸風の印象の作品も受賞しています。

ただ、まだ、『あたらよ』という文芸誌自体のカラーが決まっていない感じはあるので、何がカテエラなのか未知数である部分はあります。

noteでの最終講評を見る印象では、「面白さ」を重視した選考という印象です。

「じゃあ面白さって何?」というところにも、『あたらよ第二号』のp161あたり(選考の座談会記事)で触れられていたりするので、その講評や受賞作などを読んで、自分なりに研究してから送るといいかも。

個人的おすすめポイント(創刊号)

  • 「こはねに勝てないなら死ぬ」
  • 「夜が冷たく忍びよる」

第1回受賞作だと、2作が個人的におすすめ。

「こはねに勝てないなら死ぬ」は受賞作のなかで、ひときわエンタメ性が高い作品。夜の世界を生きる主人公の、生命力あふれる強いキャラクター性が魅力。

「夜が冷たく忍びよる」は、noteの講評でも書かれているのですが、第1回の募集テーマである「夜」を、とても巧みに、自然に絡めているファンタジー。やや児童文学風。


個人的おすすめポイント(第二号)

見どころは、最終選考会の様子を書き起こしたページです。

29ページという超ボリュームを割いて、最終候補作について作ずつ討議されているさまは、ちょっと他の文芸誌では見られない熱量です。

またこの号は、豪華メンバーの座談会に始まり、芥川賞ノミネート作家からアマチュアまで、多様な書き手が、短編小説やエッセイ、短歌などを寄稿しています。

第2回の、あたらよ文学賞の受賞作9作も掲載されています。



まとめ

対策はこれがおすすめ

  • 文芸誌『あたらよ』創刊号・第二号の「最終選考会」のページを読む
  • 受賞作を読む
  • 選考委員の著作を読む

ただここまで書いておいてなんですが、第二号の編集後記によれば、傾向と対策はしないで欲しい、とのことなので、しても無駄かもしれないですね。

とはいえ、各号の最終選考会のページは、物書きをする人にとっては学びが深いので、読んでみると得るものがあるかも。

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