- 『百合小説コレクション wiz 2』を買おうかどうしようか踏ん切りがつかない人
- 『百合小説コレクション wiz』っていうのも出てるけどどっちがいいの? という人
『百合小説コレクション wiz 2』(河出書房新社)は、2026年2月27日に発売した、短編小説集です。
タイトルの通り、百合作品オンリーの本です。
なお、同じシリーズの既刊としては、『百合小説コレクション wiz』(2023/2/4刊)があります。
この記事は、その『百合小説コレクション wiz 2』を買おうかどうしようか踏ん切りがつかない人のための記事です。
また、『百合小説コレクション wiz』とどっちがいいの、というのが知りたい人にも対応しています。
これ書いている人が、実際全部読んでみて思ったところを書きました(おすすめは主観です)。
何か参考になれば。
『百合小説コレクションwiz』シリーズの特徴

河出書房新社から出ている、百合短編集です。
2026年現在、2まで出ています。
百合小説界隈で有名な方、百合文芸の受賞者の方、女性同士の関係性を書くことで定評がある方など、豪華な顔ぶれの書き手の短編が入っています。
書きおろしもあれば、受賞作が載っている場合もあります。
河出書房新社自体が、pixivの百合文芸(第4回)にかかわっている関係からか、この本には、pixiv百合文芸の受賞者やその受賞作が目立つ、いう特徴があります。
たとえば、『wiz』収録の「あの日、私たちはバスに乗った」と「嘘つき姫」は、pixivが初出です。
なお、『wiz 2』の収録作は、全て書き下ろしのようです。
ところで、他の記事にも書いたのですが、この本の良さは、各寄稿者が、それぞれおすすめの百合作品を書いてくれている点です。
そのため、『百合小説コレクションwiz』を読んだ後には、その、各著者おすすめ百合の摂取に向かうことができる仕様になっていて、百合をたしなむものに手厚い本です。
収録作品と内容
『百合小説コレクション wiz 2』に収録されているのは、全8篇です。
以下の順に掲載されています(敬称略)
- 宮田眞砂「十年経っても」
- 文月悠光「気づかれない私たち」
- 麻耶雄嵩「大行司春香最初の事件」
- 宮田愛萌「檜扇」
- 雛倉さりえ「庭園香」
- 空木春宵「fallin’ XXXX with…」
- 阿部登龍「わたしが愛したファイナルガール」
- 桜庭一樹「来世は春の泥になりますように」
宮田眞砂「十年経っても」
小学生の女の子、陽万里の両親は、ふたりとも母親。
それが普通だと思っていたが、男と女がいないと子供が生まれないということを知った彼女は、友達のチマちゃんとともに、自分のルーツを探ることに……という話。
文月悠光「気づかれない私たち」
小さいころ心残りのある別れ方をした女友達(かなの)に、偶然再会する主人公(友里)。
でも再会した、かなのは、なぜかそっけなくて……?
ふたりで思い出の地をたどっていくうちに、誤解が溶けていく話。
麻耶雄嵩「大行司春香最初の事件」
部活×ミステリもの。
「学院のモブ」にすぎない主人公・明奏里は、不可思議部という部活に入っている。彼女は、その部活の星である、大行司春香に憧れている。
彼女たちの属する宝ヶ池女学院でかつて起こった殺人事件の謎を解いていく話。
宮田愛萌「檜扇」
学生百合。
主人公の和奏は、同じ部活の古都先輩に憧れている。というか憧れるあまり、わざわざ同じ部活に入っている。
古都先輩は思わせぶりなのに、どこか距離がある。
ラストの会話がすごく良いです。
雛倉さりえ「庭園香」
香道×学生百合。
学校でうまくなじめない真那伽は、香道が得意なのが自慢で、香道ができる自分をよすがに生きている。
しかし、自分よりはるかに優れた技術を持つ先輩・荷葉のことを知り、交流を重ねるうちに、かたくなな心がほどけていく話。
空木春宵「fallin’ XXXX with…」
吸血鬼もの。
死のうと思っていた主人公を、吸血鬼の女が助けてくれるのだが、主人公はある日、眠れないという彼女に、睡眠薬をあげてしまう。睡眠薬の魅力に取りつかれた吸血鬼は、睡眠薬を過剰に求めだしてしまい、主人公はそのツケを払い続ける。
なお、主人公には読者に伏せられている秘密があって……という話。
阿部登龍「わたしが愛したファイナルガール」
近未来もの。舞台は海外。
とある重大な事件があった高校の卒業生と、在校生の交流。
ミステリみが強めなので、あんまり説明を書くとネタバレになってしまうので説明が難しい。
桜庭一樹「来世は春の泥になりますように」
高校で知り合った身分違いの二人(カーストが違うってことだと思うのですが、舞台が現代ではないので、スクールカーストという概念がない)の人生の経過をたどる話。
二人の人生は正反対のようでいて、本当の自己を偽って社会に合わせているという共通点がある。
終盤の、「もっと元気なときに。若くて刃物みたいに心を振り回せたころに」という言葉がすごく響きます。
全部読んでみた人の、個人的おすすめ作
下読みサメダの、個人的胸アツ短編は以下です。
おすすめ1:「庭園香」
ウオオ、素晴らしいです……!
何が素晴らしいかというと、全体に漂う濃厚で幻想的なムードです。
精緻な文章で、濃密な和の香りと、女子高生同士の交流が描き出されて行き、やがてそれらが融合し、二人だけの香世界にたどり着いていきます。
ざっくりあらすじを書くと、学校になじめない主人公は、香道が得意なことだけにすがって生きていた。だが、ある日同じ学校の先輩、荷葉に香道の会で出会い、自分の抱えていたプライドと才能が、いかにちっぽけだったか思い知らされる。
荷葉は学校の成績も香道の技術もトップクラスなのに、煙草を吸えば髪も染めるという破滅的なところがあり、主人公は憤りと嫉妬にかられるのですが、荷葉は別に主人公のことをバカにしたりはせず、明るく優しく接してくれる。
荷葉が優しいのは、現実に対して虚無を抱えているからだということが明らかになってくるのですが、このあたりから、彼女のはかなさと、香のはかなさが重なって見えてきます。
主人公が荷葉を救うための手段と、その結果開かれた二人だけの幻想世界の描写の美しさは、目を見張るものです。ぜひ読んで確かめてほしい!
おすすめ2:「わたしが愛したファイナルガール」
この話はミステリになっているので、ネタバレにならないように書くのが難しいのですが、ひとこと言わせてもらえば、読後の満足感がすごいです。
あらすじをざっくり書くと、近未来×お仕事もの。
ある日、クリエイター(任意の映画の中に入ったクライアントが、自在に作品に干渉できるよう設定する仕事)の主人公のところに、受けたくない内容の依頼が来る。
それは、彼女の過去のトラウマと関係しているからだとのちに明らかになってくるのですが、その時はとりあえず、主人公はその依頼のメールを無視する。
でも、その後、母校で講師をすることになり、しぶしぶそれを引き受けることに。そこでメールを送ってきた依頼主と思われる学生に会う。主人公にも依頼主の少女にも、秘密があって……というような話です。
映画の内容に干渉できる技術を使って主人公が何をしたかったのか、その理由が切ないです。
それは主人公以外には理解・共感しがたいものなのですが、タイトル回収された瞬間に、主人公の、相手への深い愛着が、読者の胸にも広がります。
物語構造がこの本で一番複雑で、情報量の多い話なので、読むときは、登場人物を書き出しておくと混乱が少ないかもしれないです。
『wiz』と『wiz 2』はどっちを先に読んだらいいの?
どっちでもお好きな方で。
というのも、『百合小説コレクション wiz 』と『百合小説コレクション wiz 2』のどちらも、短編集なので、その巻で完結しているからです。
どっちを先に読まないと困る、ということもないです。
好きな作家や興味がありそうな話が載っている方を先に読んでみて、もっと楽しみたいな、と思ったらもう片方を読むといいと思います。
そんな一般論を聞きたいんじゃない、という人のために、この記事を書いている人の見解を書くと、『wiz』から読むのがおすすめです。
『wiz』収録作の「選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい」があまりにも神作なのでまずそれを押さえて欲しいという気持ちがあります。
しかしながら、『wiz 2』の「庭園香」「わたしが愛したファイナルガール」も胸アツでして、やっぱりお好みでとしか言いようがない。
気になったほうをどうぞ。
まとめ
『wiz』に続編が出ると思っていなかったので、それが出た喜びを記事としてまとめました。
3も出るといいよね。




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