妖怪って色々なエンタメとコラボしていて、人気がありますよね。誰もが知っている有名な妖怪も少なくないです。
ちょっと妖怪を絡めた創作をしてみようかな、という時に役に立ちそうな、カジュアルめな本を、いくつかピックアップしてみました。
カジュアルな本で興味がある部分を見つける→専門書で深堀りする、順に理解を深めていくのがおすすめです。
これは妖怪ガチ勢向けの記事ではなく、ライトなビギナー向けです。ここで紹介している本がタルいなと思うあなたは、妖怪に詳しいと思うので、良い本があったら、逆に教えてくださると幸いです。
日本の妖怪
『ゆる妖怪カタログ』
妖怪の創作をしてみたいけど、ホラーは怖い。妖怪の絵って、なんかぞっとするので長く見ていられない、と思う人におすすめなのが、こちら。
タイトルでお察しの通り、おおむねあまり怖くない、日本の妖怪を集めた本です。
博物館や美術館、図書館に所蔵された、古い絵巻物などからピックアップされた妖怪絵が、簡単な説明文とともに、ポップなレイアウトで掲載されています。
怖さより愛嬌がある絵が多く、ビビりの人にもおすすめできる妖怪本です。
ポップなレイアウトとはどういう意味かというと、文字数が少ないです。文字の面積より絵の面積の方が大きいです。大体、1妖怪につき1ページで、有名な妖怪でも見開き1ページです。
カタログ、とタイトルについている通り、読むと言うより眺めるという感じで、さくさく読破できます。日本にはどんな妖怪がいるのかな、と、軽く知りたいときに役に立ちます。
ゆるかわいい系の妖怪を時々眺めて和みたい人に向いています。
『日本の妖怪FILE』
『ゆる妖怪カタログ』より、掲載妖怪数が多くて、もうちょっとおどろおどろしい本をお探しの人はこちら。
『日本の妖怪FILE』は、あの、『ムー』を発行している会社の出版物です。
掲載妖怪は、下記のようにカテゴリ分けされています。
教科書に載っている歴史人物から、酒呑童子・河童といった有名妖怪、光って空を飛ぶこんにゃく玉のような妙な物体まで、さまざまな妖怪類が紹介されています。
ハードカバーではないので、軽いですし、ページをめくりやすいのがメリットです。
怖い絵や、おどろおどろしいエピソードが大丈夫な人は、こちらを読んでみるのがおすすめ。かなりたくさんの妖怪について、ざっとなぞることができます。
妖怪絵が大体カラーで掲載されているので、色が知りたいと言う人にも向いています。
河童のページでは、毛の生えているもの、甲羅のないもの、などさまざまな河童の絵が掲載されています。
おかしな妖怪の章では、茄子が好きな毛むくじゃらの妖怪や、白い毛玉みたいな妖怪、おなら妖怪など、不思議な存在が楽しめ、ネタの宝庫です。
動物の妖怪の章は、狸が多めです。
・なお、『ムー』認定の本だとこっちもあります↓
『illustration 238』
きれいなビジュアルから入って、ムードを高めたい、という人にはこちらの本がおすすめ↓
この号は、妖怪の特集と言っても過言ではありません。
『illustration』は、基本的には、イラストを見る・描くことが好きな人向けの雑誌ですが、文字書き勢も、眺めているとインスピレーションがはかどるかもしれません。
『illustration 238』は、妖怪・化け猫・その他空想生物を魅力的に描くことで知られる、石黒亜矢子さんの特集です。
そのおどろおどろしくも愛嬌のあるイラストレーションの紹介や、インタビューに紙面を割いてあるので、ファンには嬉しい仕様。
また、妖怪たちとの交流を書く時代ファンタジー小説・「しゃばけ」の表紙イラストレーター・柴田ゆうさんのインタビューや、作品、イラストメイキングも掲載。
柴田ゆうさんの下図から色つけ、完成までのプロセスが見られるので、プロがどうやって清書して、何で着彩しているのかなどが学べます。
また、柴田さんはこの本の中で、
「作家さんには校閲さんがいますけど、イラストレーターは基本的に自分で時代考証しなければならないんです」
と仰っています。
ちょっとでもイラストを描いたことがある人には、かなり実感を持って響く言葉じゃないでしょうか。
自分がわからない物は描けないし、そうそう都合よく、誰かが教えてくれたり間違いを正してくれたりもしない。
でもいい加減に描くとその道のケーサツに糾弾されこともある。
現代から離れれば離れるほど下調べ量に割くカロリーが高くなりがち。
自分で時代考証をしなければいけないのは、アマチュア文字書きも同じです。自分で調べ、学んだことが、そのまま自分の財産になっていきますよね。
個人的には、この本は、妖怪を描く(書く?)なら、持っていてもいい本かなという印象。重くはないので……
ところで、妖怪と言えば、水木しげるビジュアルを想像する人も多いかもしれません。
水木氏の功績は偉大です。ただ、妖怪のイラストや漫画を描く場合、水木しげるのみを参考にさせていただくと、水木しげるテイストが出過ぎてしまうという問題点があります。
同じ妖怪でも、浮世絵などに描かれた妖怪、水木絵、他のクリエイターはどう調理しているか、など、なるべくたくさんのサンプルを集め、そこから自分のオリジナリティを練っていく方向で進めるとよいのではないかと思います。
『水木しげるの妖怪事典』
水木しげるの絵で、日本の妖怪が説明されている本です。
左側に絵、右側に説明文、見開きで一匹の妖怪を紹介していくスタイル。
特徴が文献に載っている妖怪の場合はその通りに、姿がわからない妖怪については、氏がオリジナルで作っているということです。ただ、どれが氏のオリジナルビジュアルの妖怪なのかは言及されてはいないです。
初めの方のページは、カラーなので、水木イラストのファンには嬉しい仕様。
地域の伝承から水木しげるがピックアップした話とともに、水木しげるが描いた絵が堪能できる本です。
その妖怪についての水木しげるの見解も書かれていて、氏の妖怪への造詣の深さがうかがえます。
続編や、世界の妖怪事典といった感じで、シリーズもあります。
台湾の妖怪
『台湾の妖怪伝説』
この本はあまりカジュアルではないです。ハードカバーで読みごたえがあります。
ただ、台湾の妖怪だけを集めた日本語の本は珍しいので、紹介しました。
この本の特色は、台湾の伝統的な妖怪だけでなく、台湾の現代の都市伝説まで押さえており、台湾の怪異について幅広く紹介されている点です。
歴史的にさまざまな国の人を受け入れてきた島ということもあり、妖怪の幅も広いです。
オランダ王女の神や、禍を起こす豚の神、猫将軍などなど。騒ぎを起こすのでやむなく神として祀ってなだめる、というパターンが結構多めです。
台湾の怪異のエピソードが60ほど紹介されています。
そのひとつひとつに、
が記載されています。
興味のある人は、妖怪の出没場所に実際に行けるようになっているんですね。
実際に現地に赴いたところ、どんな感じだったか、などが書かれているので、地に足の着いた妖怪本といった印象です。
『台湾の妖怪図鑑』
『台湾の妖怪伝説』を立ち読みしたところ、ちょっと難しすぎるな、という人や、児童向けで台湾妖怪本を探している、という人に向けた本もあります。
それがこちら。
です。
この本は『台湾の妖怪伝説』と同じ作者の作品で、『台湾の妖怪伝説』より、だいぶ易しく書かれている本です。
この『台湾の妖怪図鑑』では、以下の4カテゴリがあり、妖怪たちが分類されています。
体裁としては、見開き1ページで1匹の妖怪が紹介されています。
右に説明、左にポップ系の挿絵が配置されています。
説明文も長くないので、読書があまり得意でない人も読みやすいかと。『台湾の妖怪伝説』に載っている妖怪もいますし、載っていない妖怪も収録されています。
個人的な印象なのですが、「牛」の妖怪が多い気がします。また、スイカの妖怪や椅子の神様など、日本とは全然違う妖異がたくさん紹介されており、読んでいて楽しさがあります。
その他役立ちそうな本
『日本俗信辞典 動物編』
妖怪の怖さは、人間の思い込みから成っているケースもままあります。
この『日本俗信辞典 動物編』は、古い時代の日本人が、どんなことを信じて生活していたのか? にフォーカスした本です。作者は、『妖怪談義』の著者・柳田國男に師事したことがある鈴木 棠三。
動物の名前が50音順に並べられているので、辞書としてのユーザビリティが高いです。
日本人の生活の近くにいた生き物については、言い伝えも多く残っているようで、割かれているページ数が多めです。
たとえば、猫の項には何が書かれているかというと(抜粋)、
などなど。
なんだか創作のネタになりそうな内容がモリモリ載っている印象。
地方文学賞狙い、和ホラーなどを書く時に、特に役立つかもしれません。
同じシリーズに、
もあります。
・参考記事↓
まとめ
もうちょっと腰を据えて妖怪を調べてみたい人は、柳田國男、鳥山石燕などにもあたってみるとよいかもしれません。
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