これは、百合小説で面白い本はないかな、と、探している方に『貴女。 百合小説アンソロジー』を推す記事です。
実際買って読んでみたので、購入検討の参考になればと思います。
この記事を読むと、
- 『貴女。 百合小説アンソロジー』はどういう話が収録されているのか?
- たしか『彼女。』っていう本もあったような気がするけど、それとの関係は?
- おすすめ作は?
などがわかります。
結論から言うと、サメダ的には、買ってよかったなと感じる話がいくつかありました。
以下見ていきます。
『貴女。 百合小説アンソロジー』とは?
2024年06月27日に、実業之日本社から発売された短編小説集です。
短編が6篇収録されています。
この本は、2022年に刊行された百合短編小説集『彼女。』に続く、実業之日本社の百合小説アンソロジー第2弾です。
特徴は、
です。
扉絵イラストがあるのが、ポップ感があって、話のイメージがつかみやすく、嬉しい人にはうれしいんじゃないでしょうか。
- 青崎有吾
- 織守きょうや
- 斜線堂有紀
- 武田綾乃
- 円居挽
というか『貴女。』の作品収録数は6篇なので、ほとんどが『彼女。』から引き続きで書かれている作家さんです。
上記の作家さんで複数人が好きな方がいるなら、その時点でかなりおすすめかと思います。
『貴女。』に収録された作品とざっくりあらすじ
収録作品(ページ順・敬称略)
- 武田綾乃「恋をした私は」/扉イラスト くわばらたもつ
- 円居挽「雪の花」/扉イラスト 高河ゆん
- 織守きょうや「いいよ。」/扉イラスト むっしゅ
- 木爾チレン「最前」/扉イラスト タカハシマコ
- 青崎有吾「首師」/扉イラスト いくたはな
- 斜線堂有紀「最高まで行く」/扉イラスト あきやまえんま
ざっくりあらすじ
「恋をした私は」:現代もの。両親が離婚し、父親のほうへついていったところ、父親の新しい彼女に恋をしてしまう女子高生の話。
「雪の花」:現代もの。うっかりかなりシリアスな事件を起こしてしまった「わたし」と、それを助けてくれる謎の女性・雪花(せっか)さんのシスターフッド
「いいよ。」:現代もの。軽い気持ちですんごい美少女の同級生と付き合い始めて、徐々に本気になっていく主人公の話。
「最前」:現代もの。アイドルもの。問題のある方法で人気を出そうと思っている地下アイドルと、それを阻止しようとする、彼女に恩のある女の子の話。
「首師」:時代ファンタジーもの。偽の首を作る首師と、首を作ってもらう武将の心理戦。
「最高まで行く」:現代もの。大学生の先輩後輩百合ラブコメ。ラブコメと見せかけて実は……というどんでん返しの話。
個人的おすすめの収録作品
- 「雪の花」
- 「最高まで行く」
この2作品がおすすめです。
どこがどういいのか、詳しめに紹介していきます。
以下、途中までのネタバレ内容を含むので、前情報なしで読みたい人はご注意ください。
「雪の花」
「わたし」こと、みおりは、ある日、ついうっかり父親を崖から突き落としてしまう。動揺していると、女の人が声をかけてくれて、「困ったときはこれを開けて」とカプセルの薬を渡される。
落ち着いてきたので薬をよく見てみると、カプセルの中には、薬ではなくQRコードが書かれた紙が入っていた。
それは連絡先だったので、藁をもすがる気持ちで連絡してみると、雪花という女性が出る。
なぜか「わたし」のアリバイ工作を手伝てくれる雪花は、とても怪しいのですが、だんだん打ち解けてきて、離れがたい存在になっていく、という話。
困っている「わたし」を、それまで全く関わりのなかった雪花が、いきなり助けてくれるのは不審ですよね。
でも雪花は頭がよくて、何としてでも助かりたい「わたし」=読者を、クレバーな方法でどんどん助けていってくれるので、その不審が信頼に変わっていきます。
その心理的な変化の絶妙さと、「わたし」が罪から逃れるために必死に行動する過程が、スリルと緊張感に満ちています。
「最高まで行く」
大学生の先輩後輩ものです。
先輩が冒頭で事故に遭い記憶喪失になります。記憶喪失になったのをいいことに、後輩は先輩と前から付き合っていたと嘘をつき、強引に同棲生活になだれ込む。
しかし記憶が飛んだ先輩は、前の、正義感の強いかっこよくて甘え上手な先輩から、かなりめんどくさいタイプの陰気な人格に変貌していた。二人称まで変わっていた。
しかし生来の聡明さは変わっていないので、後輩が即席で作り上げたフェイク同棲生活の矛盾を、ちょいちょいすぐに見抜いてしまう。
それでも後輩は、何とか先輩をだましつつ恋人関係を続ける。
その後輩が抱える多少の背徳感と、めんどくさくなった先輩を変わらず慕うちょっと体育会系なまでのガッツのある心情描写が、笑いに全振りされていて読んでいて楽しいです。
この同棲は先輩が記憶を取り戻すまでの、時限付きのものです。だからいつその爆弾がはじけて二人の関係が壊れるかわからない、という、幸せの中にも悲しみがある、複雑なエモみが味わえるコメディ。
なんですが、それだけじゃないんです。
先輩が記憶を取り戻すと、一転、コメディから転調して胸糞百合に変わり、最後はタイトル通りに最高になります。ここの部分に是非体験して欲しい心の揺さぶりがありますのでおすすめ。
『彼女。』と『貴女。』はどっちがおすすめ?
実業之日本社刊の、百合アンソロシリーズの第1弾が『彼女。』で、第2弾が『貴女。』です。
ただ、内容的にはつながってはいないので、どちらから先に読んでも問題ありません。
・(参考)『彼女。』の感想はこっちに置いてあります↓
好きな作家、好きなイラストレーターがいるほうから読んで、それが面白いと感じたらもう片方も読んでみるといいのかなと思います。
刺激が強めの作品が欲しいなら『貴女。』で、もうちょっとマイルド系がお好きなら、『彼女。』がいいかな? いう印象(個人的意見です)。
まとめ
『貴女。 百合小説アンソロジー』は、2024年06月27日に発売された短編小説集。
短編が6篇収録。
おすすめ作品は「雪の花」と「最高まで行く」。
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